(ニュース記事)少年を押さえつけるイスラエル兵、映像めぐり激論

少年を押さえつけるイスラエル兵、映像めぐり激論 (AFP=時事) – Yahoo!ニュース
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【AFP=時事】少年を押さえつける兵士と、その兵士に襲いかかる少年の家族──この出来事は、イスラエルとパレスチナの認識の違いをめぐる対立での新たな武器と化している映像がなければ、人々に知られることがなかったかもしれない。

 この映像について、パレスチナ人たちは、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸(West Bank)でのイスラエルによる不当な扱いを証明するものだと主張。一方、イスラエル人の多くは、活動家らがメディアを利用して仕掛けたわなに兵士がはめられたと主張している。

 8月28日にナビサレハ(Nabi Saleh)村で起きたこのもみ合いの映像は、ネットに投稿されるとたちまち広まり、激しい論争を巻き起こしている。イスラエルとパレスチナの対立において常にそうであるように、両者に妥協の余地はほとんどない。

 このときのビデオや、AFP特派員などが撮影した写真では、覆面をかぶったイスラエル兵が、腕にギプスをした11歳のパレスチナ人少年を拘束しようと押さえつけ、そこへ少年の家族らが反撃している。イスラエル軍によれば、少年には抗議デモで投石をした疑いがかけられていた。

 映像によると、自動小銃を抱えたイスラエル兵が少年を岩に押さえつけたところに、母親や姉を含む少年の家族や、パレスチナ側の活動家らが駆けつけた。もみ合いが起き、家族らは兵士の覆面をはぎ取るなどして、少年から兵士を引き離そうと必死に抵抗。少年の姉が兵士の手にかみつく場面もあった。最後は、助けを求める兵士の叫び声を聞き付けたイスラエル軍の上官がやって来て、兵士に少年を解放するよう命じた。兵士は見るからにいら立った様子で威嚇用手投げ弾を投げつけ、その場を立ち去っている。

 映像が広まるとパレスチナの新聞各紙はこぞって、犬の顔をした兵士を描いた風刺画などを掲載。一方、イスラエル世論の一部は、少年を解放した判断は弱腰だと批判した。

■「怖くはなかった」

 ヨルダン川西岸のラマラ(Ramallah)に近いナビサレハは長年、イスラエルとパレスチナの対立の場となっている。毎週金曜にはパレスチナ人や外国人に一部イスラエル人も加わり、近くにあるユダヤ人入植地ハラミシュ(Halamish)に抗議するデモが行われている。デモの参加者がよく行うのが投石で、対するイスラエルの治安部隊は催涙ガスやゴム弾を使用する。デモの参加者によれば、過去3年間で2人が死亡、負傷者は375人に上っており、うち約半数が未成年者だという。

 映像に登場する少年、ムハンマド・タミミ(Mohammed Tamimi)君の父親、バッセム(Bassem Tamimi)さんによると、ムハンマド君がギプスをはめているのは、自分の村でイスラエルの戦車から逃れようとした際に手首を骨折したからだという。

 ムハンマド君はAFPの取材に対し「怖くはなかったけれど、大きな声で家族を呼んで、兵隊を離してと助けを求めた」と話した。母親のナリマン(Nariman Tamimi)さんは「息子から兵士を引き離すこと、これしか頭になかった」と語った。

 タミミ一家はナビサレハで行われている抗議行動の先頭に立ってきた。父親のバッセムさんはこれまでに9回、拘束されている。映像の中でアニメのキャラクターTシャツを着ているムハンマド君の姉、アヘド(Ahed Tamimi)さんは、イスラエル兵に向かってこぶしを突き上げた写真がきっかけとなり、2012年にトルコのレジェプ・タイップ・エルドアン(Recep Tayyip Erdogan)首相(現大統領)の招待を受けた。

 一方、イスラエル人の間では、タミミ一家は子どもを危険にさらす扇動者だと非難する論調もある。状況に詳しいイスラエル軍幹部は、ナビサレハでのデモは「人目を引くための行動だ」と述べ、参加者は「死者が出かねないほどの投石で兵士を挑発し」、兵士が対抗せざるを得ない状況を作り出していると非難している。

(一定期間経過後に消えてしまうようなニュース記事を掲載しています。)

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