(ニュース記事)中国の人民元「国際通貨戦略」 狙いは周辺国取り込み“日本つぶし”

 習近平国家主席率いる中国が相次いで、中国主導の国際開発金融機関を設立している。BRICS5カ国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)共同出資による発展途上国向けの新開発銀行、アジアインフラ投資銀行(AIIB)、上海協力機構開発銀行などだ。

 さらに習氏は昨年11月、バングラデシュ、タジキスタン、ラオス、モンゴル、ミャンマー、カンボジア、パキスタンの首脳を北京に招き、400億ドル(約4兆8000億円)の「シルクロード基金」を創設すると表明した。日本のメディアは「中国版マーシャルプラン」との中国の宣伝に乗せられている。

 いずれも、世界最大の外貨準備を見せ金にした、毛沢東以来の「統一戦線工作」による周辺勢力の取り込み作戦だ。アジアへのインフラ投資ならアジア開発銀行(ADB)がある。日本政府が最大の資金提供者だ。中国はアジアでの日本の影響力を消去しようとする意図が明らかだ。

 一体、中国は「マーシャル・プラン」並みの諸国復興・開発の実を挙げられるだろうか。

 中国が原資としている巨大な外貨準備自体、今後維持できるか怪しいものである。というのは、これまでの外貨の流入源は大きく分けると輸出、外国企業からの直接投資、さらに外からの投機資金(「熱銭」)である。世界景気の低迷で輸出は伸び悩んでいるし、外国からの直接投資も中国の内需不振や人件費の高騰が嫌われて、減る傾向にある。熱銭も、習氏の不正蓄財取り締まりで巨額の汚職資金が封じ込まれたおかげで細っている。

 この分だと、外貨の大盤振る舞いには限度があることは、習指導部ももちろんわかっているはずだ。

 そこで、北京が推し進めるのが人民元の国際通貨化である。国際通貨となれば、中国人民銀行が発行する人民元をそのまま対外投資に使える。資金を自らの手で容易に捻出できるようになると、虎の子の外貨準備はしまい込んでおくだろう。

 国際通貨というのは世界のどこでも利用可能な通貨、という意味なのだが、別に厳密な判定基準があるわけではない。平たく言えば、国際的な権威のある機関が認定すれば、そうなる。その機関とは国際通貨基金(IMF)である。

 具体的に言えば、IMFが仮想上の通貨としているSDR(特別引き出し権)という概念上の通貨がある。SDRはドル、ユーロ、円、ポンドの4通貨を合成しているが、中国は2008年9月のリーマン・ショックのあと、人民元をSDRに組み込むよう、執拗(しつよう)な工作を展開してきた。SDR構成通貨は5年ごとに見直されるが、10年の見直しではIMF理事会は中国の要請を却下した。

 ところが、今年の見直しでは、どうやらIMFが承認しそうだという。欧州やアジアなどの代表が支持に回りそうな情勢だ。IMF最大スポンサー、日本の財務省はこのまま指をくわえて見守るのではないか、気になる。安倍晋三首相は厳しくただすべきだ。 (産経新聞特別記者・田村秀男)

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