(ニュース記事)左派勢力への素朴な疑問  日本の平和を望むなら、まず「独裁国家」中国の民主化を求めよ! 高橋洋一「ニュースの深層」

左派勢力への素朴な疑問  日本の平和を望むなら、まず「独裁国家」中国の民主化を求めよ! 高橋洋一「ニュースの深層」 – ライブドアニュース
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■憲法9条について、海外に向けて説明できるか

9日の長崎原爆の日、長崎市の田上富久市長は平和宣言の中で、安保関連法案について言及し、慎重審議を求めるとした。安保法関連案が戦争リスクを高める、という認識を示したことになる。一方、安倍首相は、長崎市内で被爆者団体の代表5人と面会し、「日米同盟を完全にしましたと世界に発信することで戦争リスクを減らす」という認識を示した。

筆者は、過去の戦争に関するデータから、集団的自衛権の行使を認めるほうが、防衛コストが75%安くなって、最大40%も戦争リスクを減らすという実証分析結果を示してきた(7月20日付け本コラム http://gendai.ismedia.jp/articles/-/44269)。もし、これを覆すことができるのなら、国際政治・関係論から見ても画期的であるので、是非とも知りたいものである。

もともと筆者は、データや事実に基づき物事を判断するので、集団的自衛権の行使が戦争リスクを高めるというデータがあるなら、筆者も安保関連法案に反対する。ただし、ほとんどの国が集団的自衛権の行使に賛成していることからもわかるように、そうしたデータはないだろう。

筆者が述べてきたのは、①きちんとした同盟関係をむすぶことで40%、②相対的な軍事力が一定割合(標準偏差分、以下同じ)増すことで36%、③民主主義の程度が一定割合増すことで33%、④経済的依存関係が一定割合増加することで43%、⑤国際的組織加入が一定割合増加することで24%、それぞれ戦争のリスクを減少させる(ブルース・ラセット、ジョン・オニール著『Triangulating Peace』171ページ)ということだ。

それを前提に、憲法9条について考えたい。日本の左派勢力がいう「憲法9条の価値」は、海外にはどう映るだろう。憲法9条について「戦争をしないためのもの」と外国人に説明すると、「戦争をしないのは結構なことだが、それは侵略戦争のことだろ。侵略戦争をしないというのなら、第一次世界大戦後に締結されたパリ不戦条約以降、世界の多くの国は侵略戦争をしていない」といわれる。

■ 海外では自衛と他衛の区別はない

ここでもし、日本の一部の憲法学者のように「いや、自衛戦争まで否定すべきだ」なんていったら、自衛戦争まで否定するのは国家としてクレイジーといわれてしまう。

「自衛戦争までは否定しない」といえば、「それはそうだろう」との反応が返ってくる。そして、先制攻撃をしないが、やられたときはやり返すという自衛戦争をするというのは「理にかなったいい戦略だ」といわれる。

ただ、「戦争を防ぐということであれば、なぜ集団的自衛権を認めないのか」となるだろう。戦争を防ぐためなら自衛も他衛も区別しないのが国際常識(実は国内法でも正当防衛では区別していない!)となっており、集団的自衛権の行使を否定するということは、国際社会では考えられないからだ(2014年5月19日付け本コラム http://gendai.ismedia.jp/articles/-/39296)。

というわけで、憲法9条は外国から見れば、否定はされないが、理解はされない。憲法9条だけでは、戦争リスクを減らすことにつながらないからだ。そこで、戦争リスクを減らすためには、①~⑤が必要になる。

国際政治・関係論では、①同盟、②軍事力をリアリズムが主張し、③民主化、④経済依存度、⑤国際機関はリベラリズムが主張してきた。①同盟、②軍事力は自国でなんとかできるが、③民主化、④経済依存度、⑤国際機関は相手国に大きく依存するので、相手任せでもある。いずれにしても、自国でできることと相手国に働きかけることが、平和のための車の両輪である。

そして、①同盟、②軍事力を主張するリアリズムは政治的には右、③民主化、④経済依存度、⑤国際機関を主張するリベラリズムは左が多い。

日本の多くの左派勢力は、こうしたデータを無視した感情論をいう。しかし、一部であるが、「貿易依存度を高めれば戦争リスクを減らせるなら、安保関連法案ではなく、対中貿易を促進すればいい」という意見のいう人もいる。

こういう主張の人は④の「経済依存度」だけに焦点を当てているようだ。別に④を否定するわけではないが、①同盟も否定することはない。一緒にやればいい。

■ なぜ中国の民主化を訴えないのか

筆者にとって奇妙なのは、日本の左派が平和のために③の「民主化」を求めるなら多少は理解できるが、民主化についてさっぱり発言しないことだ。「憲法9条堅持」を唱えておけばそれでいいのだという、「お花畑思考」なのだろう。

下図は、世界各国の民主度を示したものだ。民主度の測り方はいろいろあるが、ここでは、Polity Project( http://www.systemicpeace.org/polity/polity4.htm)を取り上げる。これは、1974年に米政治学者のテッド・ガーがアメリカ政治学会誌に発表したものに基づいており、1800年から約200年間のデータがあるので、しばしば引用されるものだ。

民主化指数と独裁指数に対してそれぞれ0から10のポイントを与え、民主化指数から独裁指数を差し引いて Polity Score(-10~+10)を計測する。民主化指数と独裁指数を計測するに当たっては、 国のトップの開放・閉鎖度合、競争度や政治批判の許容度等がポイントされる。

欧州や北南米の国では青い箇所が多く民主化が進んでいることが分かるが、アジアでは、Full Democracyの日本の他には民主国家が少ない。アジア、中東では赤い箇所の独裁国家が多く、民主的平和論によれば、これが紛争の要因になっている。

■日本がなぜ平和国家であり続けられたのか

しかも、アジアの国のなかには、今でこそ民主国家に分類されるものの、つい最近まではそうでなかった国も多い。日本だけが戦後一貫して、Full Democracyの国だ。

この事実を、日本はもっとアピールしていい。「戦後70年首相談話」に関する有識者会議報告書でも、日本の戦後の歩みが紹介されている。日本は戦後、首尾一貫としてアジアの平和国家であった。

その状況の中で、中国は一貫して民主国家ではなかった。国のトップが選挙で選ばれないので、独裁国家そのものである。これがアジアの紛争要因になっているのだ。筆者は、こうした状況に対して、日本のAKB48が中国で知られることは、中国の民主化にいいことだと言ってきた。AKB48の「総選挙」の仕組みが中国の若者に浸透するからだ。最近、中国は自前のアイドルグループを誕生させて注目を集めているが、「選挙」を浸透させるAKB48の進出を拒んでいるかのようにもみえる。

国内の左派勢力が平和を望むのであれば、中国の民主化を叫ぶべきであるが、そうした意見はなかなか聞こえてこない。まったく不思議だ。そればかりか、国内の左派勢力は立憲主義を根拠に集団的自衛権の行使に反対するが、立憲主義とは相容れない中国がまったく同じ主張をしている(日本の集団的自衛権の行使に反対している)ことに違和感を感じないのだろうか。

中国の憲法には、まず共産党があって、人々はその指導を受けるとも書かれている。これは立憲主義ではない。さらに、平和憲法条項もなく、中国の軍隊である人民解放軍は共産党の軍隊と明記されている。日本の左派勢力は、安全保障関連法案に反対する前に、まず中国に対して民主化するように訴え、日本の憲法9条のようなものをつくれというべきなのだ。

(一定期間経過後に消えてしまうようなニュース記事を掲載しています。)

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