(ニュース記事)AIIB「新シルクロード」構想は不可能なほど困難 プーチン大統領が壁

【世界を斬る】AIIB「新シルクロード」構想は不可能なほど困難 プーチン大統領が壁 (1/2ページ) – 政治・社会 – ZAKZAK
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20150422/dms1504221140005-n1.htm

 中国によるアジアインフラ投資銀行(AIIB)構想について、習近平主席が「シルクロードを再現する物流ルートの建設に力を入れる」と言い始め、日本の一部メディアや財界が無様な慌て方を見せている。

 「北京からヨーロッパへ至るシルクロードの再現、つまり新しくアジアを横切る一大物流ラインを建設することは、地理的に見ても安全保障問題を考えても、不可能なほど難しい」

 かつてタジキスタンに1年ほど滞在、現地の情勢を探った友人の元米国家安全保障局長官のウィリアム・オドム中将が私にこう言ったことがある。

 また、米国家安全保障局の元分析官の知人はこう話している。

 「シルクロードを再現するアジア横断物流ルートは、中国のゴビ砂漠からクンルン山脈の麓を抜け、アフガニスタンからイラン、イラクを通りイスタンブールまでのルートがある。もう一つ全く新しい構想として、カザフスタンからヴォルゴグラード、キエフを抜け、ヨーロッパに入るルートが考えられる。そのいずれも地政学上、あるいは安全保障上、大規模な工事を行うことはとてもできない」

 シルクロードといえば、私が親しくしていたNHKの名プロデューサー、玉井勇夫氏が作った歴史的なテレビの名作が思い出される。私は玉井氏の依頼を受け、外交上の問題を解決するために協力したことがある。番組制作にあたって、最も難しかったのは、中国奥地を横切るシルクロードが秘密のミサイル基地や核兵器基地の周辺を通っているため、撮影の許可をとりつけることだった。

 玉井氏の意図は、北京からローマに至るシルクロードの完全なロードマップをなぞることではなく、中国奥地の砂漠に残された文化を美しく描き出すことだった。アフガニスタンから先は全て省略し、続編としてシリア、レバノン沖からローマに至る海のシルクロードを制作した。

 古い話は別として、習主席が新しくシルクロードなるものを作ろうとした場合、カザフスタンやその他の旧ソビエト内を通そうとすれば、ロシアのプーチン大統領が立ちはだかって、許さないであろう。

 アフガニスタンやイラン、イラクに工事を行うため、中国の建設会社や工兵隊を送りこむことも安全保障上、全くと言っていいほど不可能だ。ロシアはAIIBの創設メンバー入りしているが、現実問題として考えた場合、習主席のシルクロード構想は中国国境で終わらざるをえない。

 習主席は海軍の増強に失敗し、海上ルートによる世界貿易が今後、危険になってくるという見通しのもとで、アジアを横断するシルクロード構想を打ち出したと考えられる。だが、実現のメドはどこにもない。この構想の情報に踊らされている日本の財界は、世界の現状にまず配慮することが必要である。(日高義樹)

(一定期間経過後に消えてしまうようなニュース記事を掲載しています。)

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