(ニュース記事)移民急増を拒絶したスイス国民投票の衝撃

 保守化・右傾化傾向が強まっているのは、アジアだけではない。ヨーロッパでも似たような現象が起こっている。この現象を読み解くキーワードは、「グローバル化への不安」だ。

移民規制を求めた有権者

 保守化傾向を示す端的な例が、2月9日にスイスで行われた国民投票である。外国からの移民を規制するよう求める右派政党SVP(スイス国民党)の動議に、有権者の50.3%が賛成したのだ。この結果は、隣国ドイツだけでなく、ヨーロッパ全体に強い衝撃を与えた。スイス政府は、今後3年以内に移民規制を法制化しなくてはならない。

 スイスは欧州連合(EU)に属していないが、2002年にEUとの間で「移住の自由に関する協定」に調印した。この結果、EU加盟国からスイスへの移民が急増した。

 スイス司法省によると、2012年5月からの1年間にスイスに移住した外国人の数は約15万人。前年同期比で5%の増加だ。スイスから国外へ移住した外国人の数を差し引くと、約8万2000人の増加となる。これはスイス政府が想定していた移民数の10倍に相当する。スイスの人口約810万人のうち、ほぼ4分の1が外国人である。

 スイスに住む外国人の約66%がEU加盟国からの移民だ。最も多いのがイタリア人(約30万人)とドイツ人(約29万人)である。最近ではユーロ危機後の不況に苦しむポルトガル人の移民が増えている。

 SVPのトニー・ブルナー党首(39歳)は「我々は外国からの移民を完全にストップしろと言っているわけではない。スイス政府のコントロールなしに、大量の移民がスイスに押し寄せている現状を変え、企業が社員を採用する際にはスイス人を優先するべきだと言っているのだ」と主張。具体的には、スイスとEUの間の「移住の自由に関する協定」を破棄し、移民の数に毎年上限を設定することを求めている。

 ブルナー党首は、ザンクト・ガレン出身の農民である。彼が始めた「大量の移民に反対するキャンペーン」は、過半数の有権者、特に農村など大都市以外の地域に住むスイス人の琴線に触れた。

都市と地方の対決

 これに対しスイス政府と経済界、大都市の市民は、SVPの動議に反対した。特に外国からの労働力に依存する経済界は、移民規制を批判するキャンペーンを行った。チューリヒやジュネーブには世界的に有名な大銀行や保険会社が拠点を置いている。これらの企業は、ドイツやフランスなどから、高いスキルを持った人材を常にリクルートしている。

移民急増を拒絶したスイス国民投票の衝撃:日経ビジネスオンライン
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20140217/259859/?P=1

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